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公共図書館における「自炊」支援

twitterの140字では足りず、facebookでは今だ限られた人にしか伝わらないので、ブログに書きます(twitterやfacebookをはじめてからというもの、ブログに書くことがめっきり少なくなりました…)。

さて
 紙に印刷・製本された図書を、断裁機等をもちいてバラし、全ページをスキャンし電子画像やPDF化する作業を「自炊」と称するそうです。昨年あたりから登場したiPadやAndroid端末などのスレート型(板型)PCにより、まるで本のページをめくるような操作感覚で「本を読む」ことができる、そんな機会が私たちの前に登場しました。
 所有している本を本人に代わって電子化するサービスや、あくまでも使用者によるデジタル化にこだわるサービス、さらには大手レンタルビデオショップによる自炊サービスの開始…等、いろいろな場面で「個人が所有する本のデジタル化(一部違うところもあるけど)」がちょっとした話題になっている。このような所有している本のデジタル化を地域の公共図書館が機材やノウハウを提供することで、少しでも地域の文化活動の支援になれば…と、考え始めた。
 わたしは、まずは「自炊体験講座」を数回開催し、その後に来館者に機材やノウハウを提供する自炊しえんサービスを提供したいと準備中だ。
 期待する声がある反面、若干の誤解や著作権法などの解釈も含めて、ここにまとめてみたい。


【サービス内容】
 1.個人が所有している本を、私的利用するための電子化作業支援である。
 2.来館する個人に、1)断裁機、2)イメージスキャナ、3)ソフトウェアをインストールしたPCを提供する。
 3.上記の物品の提供は、図書館資料ではないため[有料]による提供も検討。
 4.デジタル化作業は、所有者(利用者)自らが行なう。

【提供する機材】
 ・断裁機:断裁位置の確認ができ、大きな力をかけずに本のような重なった紙を断裁できる機器
 ・スキャナ:短時間で両面をデジタル化できるドキュメントスキャナ
 ・PC: 上記のスキャナを操作するソフトウェアがインストールしてあるPC
 ・自炊マニュアル:手順を記するだけでなく、著作権に対する理解を深め、自炊した電子書籍を正しく扱うための知識を提供する。

【背景】
 地域の公共図書館が、いわゆる「自炊支援サービス」を提供するには、2つの理由が存在する。
 
 理由その1: 所有している図書の処分に困っている人たちが実に多い。公共図書館の仕事をしていると必ず地域の方からの「寄贈」の申し出が少なからずある。一般的に考えれば年々削減される資料費に対して図書の充実に貢献しようという、まことにありがたいお申し出ではあるのですが、図書館の内情を考えると、そうそうどれもこれも受け取る事ができません。お断りする場合も実に多いのです。それらの本は運がよければブックオフなどの古書取扱店にて引き取ってもらえるかもしれませんが、それでも値段がつかず処分される本も少なくありません。また、引越時における廃棄処分、あるときは持ち主の他界により遺族が泣く泣く廃棄する…とったものも、少なくはないのです。
 そうした図書たちを、せめてコンテンツとして手元に置く事ができるデジタル化は、文化発展に寄与することを考えても、実に切実な要望に対するひとつの回答(ソリューション)になるのではないか、そう考えるに至っています。廃棄すればその内容は、その所有者の手元には残りませんが、デジタル化することで、何が書かれていたのか/描かれていたのか…せめて、それだけでも残すことができるのです。

 理由その2: 民間の自炊サービスでは、著作権について学習することは無いのではないでしょうか。まぁ、個人がやるぶんには合法とか、サービスとして成立しているんだからたぶん合法なんじゃないの…。程度の認識の方が多い様に思います。だからこそ、「自炊をしたい」という著作権を意識するには絶好のチャンスを地域の公共図書館としては、「著作権に関心を持ち、著作物に関する権利の保護と文化発展のための利用とのバランス」について、できるかぎりわかりやすく著作権法を伝えることができる。そのように考えているのです。
 もちろん、図書館資料に対する資料複写も、著作権に関心を持つ機会でもあります。地域の公共図書館で、自分が所有している本をデジタル化することで、著作権に対する考えを深めてもらいたい。そのような願いも、この「自炊支援サービス」には含まれているのです。


著作権法第30条、第31条は、図書館が利用者のみなさまに正しい理解をしていただかなければ、図書館としての利用そのものに大きな影響を与えます(著作権法の解釈による利用の萎縮は図書館の本意ではないと考えています)。


ちなみに…著作権法第30条の1に「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合」は、私的使用のための複製において次に掲げる場合を除く…ひとつの条件でもあるのですが、これには著作権法 附則に

(自動複製機器についての経過措置)
第五条の二  著作権法第三十条第一項第一号及び第百十九条第二項第二号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。

とあることから、著作権法第30条の1で公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器には、文書又は図画の複製に供するものは含まれない。すなわち、本を断裁してスキャンする機器は「当分の間」ではあるものの、そもそもこの法律上は自動複製機の対象外にある。

以上のように、公共図書館における所有図書のデジタル化を支援するサービスの提供は、合法的であり且つ利用者さんが著作権に関心を持ち学ぶための絶好の機会でもあり、著作権の理解のための情報/資料提供も図書館の大きな役割であると、考えるに至っているのである。


【追補】
 昨今、出版業の低迷が言われるなか、地域の公共図書館が自炊などを支援すると、さらに本が売れなくなる…という意見も必ずあるかと思う。すでに、はてブの書き込みをみていて追補ではあるが、そのことに対して、わたしはこう考えている。

 ・消費者の本棚を空ける:本を買わなくなった理由のひとつとして考えられるのは、一番本を買う人たちの収蔵力が限界にある。平たく言えば、家の中が本で一杯になっている。所有している本を電子化することを推進することで、場所を取る本を捨てることができ、空間的に[空き]を生むことで、そこに「本の消費スペース」を物理的につくる。

 ・コレクションとしての電子化:好きな作家に対しては、その作品だけでなく、雑誌のインタビューや原作とした映画やドラマ、そのサウンドトラック、新聞記事…などなど、あらゆるものをコレクションしたくなる。こまめな人であればスクラップブックをつくるなどすることもあろうが、これを電子スクラップブック/デジタルスクラップブックとして、自分のパソコンにすべて入れることができたら…。これは作家へのファン度を増し、好きな作家はトコトン好き。ということにも繋がるのではないか。ファンとしては徹底的にファンでありたい。その気持ちを電子化で実現する。

 断捨離がちょっとしたブームであるが、捨てる前にせめて「写真だけ」でも取っておきたい…として、デジカメで撮影することが少なくない。身の回りのモノを一度捨てることで、新しい需要を喚起することもある。たぶんそれは必ず新しい需要を生む。

 公共図書館が「自炊支援」をすることで、家の中から本を減らすことができ、また新たな需要を生むことに繋がるのではないだろうか、と考えるのです。



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富士通


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by maruyama_takahiro | 2011-03-09 00:09 | これからの図書館 | Comments(0)
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