骨 中原中也

ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ、
ヌックと出た、骨の尖(さき)。

それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。

生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこともある、
と思へばなんとも可笑(をか)しい。

ホラホラ、これが僕の骨――
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?

故郷(ふるさと)の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて、
見てゐるのは、――僕?
恰度(ちやうど)立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。

(「詩集・在りし日の歌」より)
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最近、ちょっと気になっている詩。
なんでかなぁ...

ある方とのブログのコメントのやりとりで、「執筆療法(writing therapy)」なんてものがあるかもしれないね...などとやりとりをしているう。
書くことで癒されることはあるのだが、表現するための語彙を豊かにし、言葉を使って表現することで、自分自身への精神的な治療になるのかもしれない。
書き出す事による治癒力。

「執筆療法(writing therapy)」って、図書館プログラムっぽくないかな?
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by maruyama_takahiro | 2007-09-25 11:56 | おススメ | Comments(3)
Commented by maruyama_takahiro at 2007-09-25 11:58
詩の全文を掲載しているので、著作権処理はどうなっているの?って思う方もいらっしゃいましょうが、中原中也はすでに著作権切れております。

詩集・在りし日の歌(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000026/files/219.html
Commented by おちゃめ at 2007-09-25 18:48 x
執筆療法だとちょっと堅苦しい感じがしませんか?
私なら「作文療法」ですね。
英語だと...あれ、同じだ。
Commented by やまじゅん at 2007-09-26 09:35 x
20代の頃、初めてこの詩を読んだときは下手な詩だなと思ったのに
小林秀雄がかいた死んだ中原でこの詩を引用するのを読んで
この感性こそが中原の強い魅力だったのだと知りました

昔、一緒に暮らしていた子が山口だったので
湯田のあたりもしょっちゅう行きました

鎌倉の小林秀雄の墓が
いつも鮮やかな花で飾られているのと比べ
山口の川沿いの中原の墓は
花の枯れた跡さえ見かけられませんでした

なんだかとても懐かしくなってきました
また読み返してみます
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