2014年 07月 23日 ( 1 )

民主主義の学びの場にする指定管理者制度

 2003年(平成15年)、地方自治法が改正されて、それまで行政あるいは一部の団体にしかできなかった公の施設の管理運営が民間団体(営利企業や非営利団体など)にも解放される、いわゆる「指定管理者制度」が誕生しました。

 指定管理者制度(Wikipedia)

 この条文の改正による制度運用に関しては、いわゆる「スキーム」が国からは出されることはありませんでした。この法律改正をうけて、各都道府県および各市町村は、自分たちで制度運用方法を考えなければなりませんでした。その結果、ひとつの法律に基づく制度運用が、設置自治体ごとにバラバラ、同じ自治体でも公の施設ごとにバラバラ…という状況を生み出す結果になってしまい、どのような制度運用が正解なのか…は、結果をみてみないとわからない…という状況が生まれてしまったと思っています。

民間の営利企業が指定される場合、それまでの自治体出資により設立されたいわゆる「第三セクター」、そしてNPO法人などの市民団体…等々。法律上は個人ではなく二人以上の任意団体でも可能ですが、制度導入する事例ごろに、応募資格などが決められこれも自治体ごと/施設ごとに、統一されることはありません。
 さて、そんな「指定管理者制度」は、当初より現在にいたるまでいろいろと批判の対象になってきました。ことに「図書館における指定管理者制度の導入」に関しては、その最大の業界団体である日本図書館協会自信が、「図書館への指定管理者制度導入は、なじまない」と公式に声明を発表するに至って降ります。

公立図書館の指定管理者制度について(日本図書館協会)

 私たち、山中湖情報創造館およびその指定管理者であるNPO法人地域資料デジタル化研究会は、制度が施行された翌年の2004年(平成16年)4月の開館当初より指定管理者制度を導入した図書館として、今日まで4回の協定を更新し10年間事業を継続してきました。継続性に難あり!と言われた制度ではありますが今日までこれらたことは、多くの方々に支えられ評価された結果だと自負しております。

前置きが長くなりましたので、いよいよ本題。
実はこの「指定管理者制度」は、公の施設を住民自治による民主主義のあり方を学ぶ絶好の機会であると、私たちは考えています。ただ、そのためには設置自治体側も住民側も乗り越えなければならない課題が多い事は重々承知の上で、こんなモデルを考えています。

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行政(パブリックセクター)による公の施設(ここでは「公立図書館」をイメージしながら描いています)の管理運営モデルです。
これに対して、指定管理者制度を導入し、民間の営利企業が指定管理者となった場合は、このようになります。
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あえて、オレンジ枠の部分に「意思決定に参加できない」と書きました。
パブリックセクターにおいては、住民は教育委員会にクレーム言う事は可能です。また教育委員の方々を通じて、あるいは都道府県議会/市町村議会の議員を通じて、住民の意見を反映させることは不可能ではありません。
それに対して、民間の営利企業であるプライベートセクターが指定管理者になった場合、プライベートな民間企業の意思決定に対しては、住民の意見は反映されにくいのが実情です。もしも企業が株式を一般公開していれば、株主になって株主総会で質問するなどの関与はできますが、これはなかなかハードルが高いことです。逆にいえばプライベートな営利企業が指定管理者になった場合は、その点に十分注意することはひとつの手法と考えられるでしょう。
プライベートセクターである民間の営利企業が指定管理者になる場合に対して、NPO法人が指定管理者となった場合の図がこちら
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あえて、オレンジ枠の部分に「意思決定に参加できる」と書きました。
 ご存知のとおり、NPO法人は非営利団体(Non-Profit Organization)です。その活動に興味関心を持っている方ならどなたでも会員になることができます。むしろ正当な理由が無い限り入会を希望する人を拒むことはできません。当然その自治体の住民もNPO法人の会員になり、総会における議決権を有することも、理事に立候補することもできます。営利企業の株主になるよりもはるかにハードルは低く、意思決定に参加することができるのがNPO法人の特徴でもあります。
 このモデルから、地元の公の施設の指定管理者がNPO法人になった場合、住民を含め興味関心のある方ならどなたでも会員になり意思決定に参加することができるのです。逆な言い方をすれば、地元の公の施設が指定管理者を募集するのであれば、これこそ住民自治による管理運営ができるぜっこうの機会!と捉えて、地元住民がNPO法人をつくって応募することは可能なのです。

 それはまさに、住民自治による民主的な公の施設の管理運営モデル が、指定管理者制度を用いて実現可能になるということなのでは、ないでしょうか。しかも施設や設備などの初期投資や管理運営に必要な費用も指定管理料として支出していたく…など、市民団体が自発的に図書館や学習施設などをつくるのに比べてはるかに大きな規模で、はるかに安定した財源で、それが実現できるのが、この「指定管理者制度」なのだと考えています。

もちろん、NPO法人の経営、意思決定における合意形成の手法、などなどの課題はありますが、これらはじつは「民主主義のためのエクササイズ」にほかありません。
これまでの、行政に「おまかせ」民主主義や「おねだり」民主主義は、管理運営が民間企業になっても同様に「おまかせ&おねだり」になりがちですが、管理運営主体が自分たち自身になればそこに「合意形成」や「意志の反映」などは、《他人事》から《自分たち事》になっていきます。

山中湖でも当初は、そんなイメージで取り組んでいたのですが、僕たちは地元のNPO法人ではなかったこともあり、どうしても住民側からはそれまでの行政に対する姿勢が代わらなかった…ということがあったり、結果として地元の市民団体が分裂解散してしまったこともあり、結果とし私たちのNPO法人が10年間継続することとなりました。

 以上のように、指定管理者制度そのものは、市民団体が住民自治により公の施設を管理運営できる制度でもあるのです。これは今までの日本の官僚主導による民主主義のあり方を変えていく契機にすらできるものだと思っています。図書館の業界団体や社会教育関係の集まりの中で「指定管理者制度なじまない/ふさわしくない」という議論が大勢を占めているようですが、これこそまさに合意形成のあり方、住民自治のあり方を考え学ぶための「民主主義の基本を体験学習できるエクササイズ」にできることを、設置自治体側も、住民側も再考する必要があるのではないでしょうか。

諸外国の図書館においても、プライベートセクターである民間営利企業へのアウトソーシングに対しては反対する意見が見受けられますが、上記のような住民自治による公共図書館は、コミュニティ・ライブラリとして成立している事例が少なからずあります。

国が作った制度、地方自治体が運用する制度ではありますが、そこにこそ「住民自治による民主主義モデル」があることを考えていただければ、とてもうれしく思います。
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by maruyama_takahiro | 2014-07-23 09:56 | 日々是電網 | Comments(0)