これは僕の自論なのだが、電子書籍のダウンロード貸出をはじめたからといって、それがすぐに「電子図書館」だの「デジタル・ライブラリー」だのというのは、ちと早急するぎる気がする。
本当に、デジタルな図書館であるためには、何をしなければならないのか。実はまだ誰もあまり深くは考えていない(少なくとも公共図書館では)。 ・米国Amazon.com社、Kindleに図書館から電子書籍を借りられるサービスを開始へ (カレントアウェアネス ポータル) 海の向こう、米国ではすでにほとんどの公共図書館が電子書籍のダウンロード貸出を始めている。しかしそれは、カセットテープによるオーディオブックから、MP3形式の音楽データのダウンロード貸出をへて、じゃぁ次は電子書籍(eBook)だね…みたいな流れでしかない。しかもほとんどの電子書籍データは、OverDrive社のクラウド上にあり、図書館は利用料金(ライセンス料)を払い続けるだけであって、「所有」することも「保管」することもない。これは図書館機能の[柱]の一本を失うことにもつながりかねない。だから僕はこれだけでは、電子図書館/デジタルライブラリーを声を大にして言うことはできないのだ。 一方で、利用者さんにしてみれば、図書館にいかずとも自宅からダウンロードでき、PC/Mac、iPad、SONY Reader, こんどは Amazon Kindleに取り込んで読むことができる。借りるために図書館に行くこともなければ、返却に行くことも無い。返却処理さえ2週間たてば自動的に行なってくれる。図書館側にしても、督促処理もいらないし、汚損・破損・紛失…すら無くなる。が、指摘した通り毎年公費で利用料を払っていても、所有する蔵書は何も無い図書館が出来上がるだけの[道]なのだ。 一方、日本では興味深いことが起きている。 ・佐賀県武雄市、iPadを活用した電子図書館サービス「武雄市MY図書館」を開始 (カレントアウェアネス ポータル) さっそく、iPad アプリをダウンロードして見てみた。 まずは武雄市/武雄市教育委員会が著作権を持っている資料のみであるが、これらの電子書籍は[武雄市]が保存し所有しているデータなのである。 今後、公共図書館が「電子書籍」を取扱い、ましてや「ダウンロード貸出」などに取り組むにあたり、利用者の利便性は大事であるが、それ以上にそれらの資料を保存/保管し、後世にきちんと伝え残すことができるのかどうか…も、考えて行かなければならない。 目先の便利さだけでは、公費の無駄遣いになりはしないか。よ〜く吟味する必要がある。 一方で、僕は図書館の「自炊」が、電子図書館を実現するもうひとつの大きな要素だと考えているのだが…誰か賛同してくれる方は、いらっしゃらないだろうか?
by maruyama_takahiro
| 2011-04-23 01:05
| これからの図書館
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