図書館業界において、ヤング・アダルト(YA)サービスというものがあって、いわゆる児童以上大人未満の子どもたち向けの読書活動支援サービスを指す...らしいのであるば、まぁ、ほとんどの図書館は、書架の一区画をYAコーナーとして、YA対象書籍を排架している程度である(ウチも同様)。
昨今、子どもたちの読書離れ/活字離れが言われて久しいのであるが、小学校の時はけっこう本を読んでいたけど、中学生になってから読まなくなった...とか、もう小学校高学年で読まなくなりました...とか、良く耳にする。子どもの読書離れは、小学校高学年から中学生あたりの...いわばYA層の読書離れが問題なのであって、現在の図書館はその事に対して、課題解決の手段を持っていない..のが、現状である。児童サービス事例集などを見ても、未就学児対象か、せいぜい小学校中学年以下を対象にしたプログラムばかりが目立ち、肝心要の小学校高学年〜中学生を対象としてプログラムがいきなりほとんど皆無の状態になる。これでは、子どもたちの活字離れもいたしかたない...の、かもしれない。 まぁ、部活動など学業以外の活動が増える世代とも言えるので、一概に図書館の無策を指摘する事はできないが、....ちょっと足を止めて考えてみると....何でYA層に読書が必要なのだろうか?...って、真剣に議論されたことは無いのかもしれない。なぜ、彼ら彼女らにその年代における読書が大切なのかを、判りやすい言葉で使える人がいないではないだろうか。 =-=-=-=-=-=- 「ロール・モデルとの出会いを求めて −ティーンズにおける読書活動のひとつの目的−」 役割モデルという存在がある。英語ではロール・モデル(Role Model)。行動の規範となる存在、お手本する人といってもよい。いろいろな困難に立ち向かうときや、苦しい選択をしなければならないようなとき、「あの人だったらどうするだろう?」と思い浮かべる存在である。アメリカの前大統領のクリントン氏にとっては、J.F.ケネディ大統領だそうで、彼だったらこんなときどんな選択をするだろうか...と、自問自答しながら、アメリカの舵取りをしてきたそうだ。 日本においては、「野球選手になりたい」などの職業、「松井みたいになりたい」というヒーロー願望はあるものの、「こんなとき、誰それだったらどうするだろうか?」というモデルを持っている人は...非常に少ない。そもそも、学校教育の中にも、家庭内にも、そんな教育が必要だなどと考えられてはいないようなのだ。 さて、そんな中でも、やはりスポーツ選手や芸能人はひとつのあこがれの対象となることが多いが、身近にそうした人を見つける場合も少なくない。「将来は、あんな人になりたい」という気持ちが出てくるのも、小学校中学年以上あたりからである。保母さんになりたい...という人は、保育園時代にそうしたモデルとなるあこがれの先生と出会っていただろうし、看護婦さんになりたい...という人は、病気や怪我で素敵な素敵な看護婦さんにお世話になったから...というのが、多いはずである。最近、海上保安庁への入隊希望者が増えているそうだが、それもテレビドラマや映画の影響が少なくない...だろう。 ただ、この出会いも制限がある。今、同時代を生きている人で、かつ、その年齢で出会う事ができる人...という条件がつくのだ。 しかしながら、少し目線を変えてみれば、図書館には伝記やドキュメンタリー、人物事典等々、時間も空間も飛び越えて、様々な人物とである事ができる。本のページを開けば、ナポレオンは馬上で指揮をとっていたり、坂本龍馬は脱藩の旅をしていたり、手塚治虫は机に向かってマンガを書いていたり...そうした人物の生き生きとした場面に出会えるのが、実は図書館なのである。キュリー夫人はラジウムを発見するまでどんな苦労をしたか、ライト兄弟は、エジソンはどんな人?...時代も空間も言葉も飛び越えて、図書館では様々な人とであることができるのである。 そんな中から、自分に相応しいロール・モデルを見つけることができると、それはそれは素敵な出会いなのだと思う。 困った時、苦しい時、西郷隆盛さんだったらどんな決断をしただろうか? とか、リンカーンだったら、何を考えただろうか? もちろん、自分の想像にしかすぎないかもしれないが、そんなロール・モデル(役割モデル)と出会える場所が図書館であり、出会うためには「読書」が必要不可欠なのである。 ただ活字を目で追いページをめくるだけが読書ではない。そこから自分のロール・モデルとなる人物と出会うことが、図書館に行き、読書をする..、ひとつの目的であり理由としてもいいのではないだろうか...特に、ティーンズにおいては....。 具体的に、図書館でどのようなプログラムを展開できるのかは、まだこれからアイデア出しやプランニングをすることになるが、そんな意図をもって、YA/ティーンズサービスを考えてもよいのではないかと、思っている。
by maruyama_takahiro
| 2006-10-21 13:54
| ひとりごと...
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