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子どもの読書離れは、作品そのものにも一因があるという仮説

ことの起こりはこう...
・某助成事業による子ども向け読書環境の充実のパンフレットを眺めながら
・子どもの本といえども俺だったらこういう100冊は選ばないぞ...と思い
・じゃぁ..どんな選び方をするかな...と思ったところ
・昨今の児童文学における[大きな欠落]を発見
・そんな視点でうちの蔵書をみたら...おぉぉぉぉぉこれは大欠落だ!
と思ったまで。

結論からいえば、こうなる
 「子どもの本の中に、子どもたち自身があこがれる人物像(キャラクター)が存在していない」
ということなんです。

僕が選ぶ子どもの本100冊があるとしたら、そこには必ずヒーローやヒロインが登場するものを考えたいなぁ...と思ったのです。ウルトラマン、仮面ライダー、ヒーロー戦隊、戦う少女チーム等々。実際には図書なので、直接そういうものだけでなく、読み物としての探してみたところ....無いんです。児童文学/子ども向け作品の中に、自分を投影できるヒーローやヒロインが文学作品の中から消えているんですよ。僕が子どもだったころは、少年探偵団の小林くんとか、明智小五郎とか(僕の場合は犬塚信乃とか)...そういう存在があったように思うのです。もっと昔になれば、猿飛佐助とか霧隠才蔵とか。
そういう視点でみると、今の子どもたち向けの作品の中に、きらめく個性的なキャラクターとしてそんざいしているのは、「かいけつゾロリ」しか存在していないといってもいいくらいです。他に誰かいますか? 居たらぜひ教えてください、読んでみたいと思います。

子どもがお菓子が大好きなのは、成長する脳が必要とする糖分を大量に吸収しなければならないという、実はかなり必要に迫られているからであるのと同様に、子ども自身が自分の人格形成のために何らかの[ロールモデル/役割モデル]を必要としていて、それを子どもの本は供給できなくなっているんです。だから子どもたちは本からでなく、マンガやアニメやゲームに登場する魅力あふれるキャラクターやスポーツ選手に向かってしますんです。

子どもたちは、ヒーローやヒロインなど自分を投影できるキャラクターを自分自身の人格形成のモデルとして必要としているんです。かつて本しかなかった時代には、活字でも猿飛佐助や霧隠才蔵や歴史時代物語でも読んでいたのです。それが今の子ども向け作品の中からは、すっぽりと抜け落ちてしまっている。必要とするキャラクターはもう活字の世界には居なくなり、マンガやアニメやゲームの世界にしかいないから...そっちへいっちゃうんです。

なんていう仮説を立てています。
実証はこれからです。
ですが、児童文学や子ども向け作品を研究されている方は少なくないと思うのですが、たとえ大胆仮説であっても、僕みたいなことを考える人は居なかったのかなぁ...と、思っています。

でもよくみてください。
児童書の書架で、[魅力あるキャラクター]を探すことが...かなり絶望的に不可能になっています。活字の世界ではヒーロー/ヒロインが絶滅してしまったといっても、言い過ぎにはならないんじゃないかな。そういう意味では「かいけつゾロリ」は子ども読み物世界における絶滅危惧種としてとらえてもいいかもしれないですよ。

ちなみに...外国の作品では、そうしたキャラクターがはっきりしている作品が多いように思います。読者が自分を投影したり、あこがれや理想のモデルとしたりする登場人物像が作品の中ではっきりしている。残念ながら日本の子ども向け作品の中では...前出の「かいけつゾロリ」くらいしか、現在は見つけられなくなっちゃった。

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それでも時折、ライトノベルズやティーンズ文庫あたりに、ちょっとしたキャラクターが登場したりするのですが...むしろそれはマンガやアニメのノベライズだったりする。例えば..「涼宮ハルヒ」とかね。マルヤマ的には長門有希だったりするけど。
by maruyama_takahiro | 2009-05-31 17:24 | 図書館ゲーム/プログラム
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